社会福祉法人しらぬい会は、発達支援事業所の園庭を整備し、子どもたちが個性を発揮しながら安全に挑戦できる遊びの環境をつくった。「遊びの大切さ」を職員にも保護者にもどう伝えるか、その問いに法人が選んだのは、目に見える環境づくりという答えだった。決して小さくない投資を伴うこの整備に、なぜ踏み切ることができたのか。園庭整備の背景から導入後の変化まで、法人を率いる坂田理事長にお話を伺った。

遊びの大切さを、どう伝えるか

Playground Maintenance

— 今回の園庭整備にあたって、どのような課題があったのでしょうか。

坂田理事長:遊びの大切さを、職員にも保護者の方たちにもどう発信していくか。それをどう伝えたらいいのかを考えたときに、まず視覚から入ったほうがいいのではないかと思いました。そこに、子どもたち1人ひとりの個性や才能をどう伸ばすか。そういうものを総合的に考えていって、遊具や園庭整備の大切さにたどり着いたんです。

— その課題は、子どもたちや職員の皆さんにどのような影響を与えていたのでしょうか。

坂田理事長:理想はわかるけれど、現実はやはり怪我が起きてはいけない。そういう思いは、職員の中にも我々の中にもありました。ただ、人間はとても頭がいいと思っているので、経験を積み重ねるほど立派な大人になれる。それが私の中で確信に変わったんです。

安全に遊べて、1人ひとりの個性をどう引き出せるのか。それを職員と共有して、同じ価値観に近づけながら、職員のいいところや感性、個性をどう引き出せるか。そのために必要な園庭整備だと思って取り組みました。職員にも1人ひとり浸透していっているので、1年、2年、3年と重ねれば、言葉にしなくても同じ方向を向いていけるのではないかと思っています。

想像を超える空間をつくるという決断

Space

— 数ある選択肢の中で、今回ジャクエツに任せていただいた理由をお聞かせください。

坂田理事長:本社を見学する中で、研究・開発・設計それぞれの部署があって、切れ目のない情報の共有がある。これからもっと開発されていくのだろうな、という印象を受けました。だから、ここだと決めました。他社にはない部分だと感じています。

— 設計を進める中で、特にこだわった点や、ここは譲れなかったという思いはありましたか。

坂田理事長:子どもの遊びを引き出すためのデザインです。子どもたちからも職員からも、パッと見たときに想像を超えるような空間。色だったり、形だったり。ただ珍しいから入れたいということではなくて、子どもたちの様子を数年間観察する中で、1人ひとりがどう遊ぶのか、こういう遊びができるのではないか、というものを引き出せる遊具。そこは譲れませんでした。個性や知性、社会性が学べること。総合的に考えた中で、この遊具だというものがやはりありました。

— 計画を形にするまで、苦労されたことや、印象に残っているエピソードはありますか。

坂田理事長:この遊具を入れたからといって、収益が増える増えないというのはやはり心配しました。保護者の方から「なんでこんな危ない遊具を入れたんですか」と言われないか、という不安も正直ありました。大きな投資をして失敗したらどうするのか、という声も社内にありました。

けれど、しっかり発信して、みんなが同じ価値観を共有していければ組織としての発信はとても強いものになると思ったんです。実は1年前から、職員へのレクチャーを徹底してきました。だから全員が同じ方向を向けるのではないか、というのが成功のポイントだと思っています。

苦労したのは、やはり共有の部分ですね。「失敗したらどうするのか」ではなく、「成功するために、みんなでアイデアを出そう」という方向に持っていく。そこにいちばん力を注ぎました。

子どもが自ら動き出し、現場が変わった

On-site

— 整備後、子どもたちや職員の皆さんに、どのような変化がありましたか。

坂田理事長:まず子どもたちは、最初の1〜2週間は「どうやって遊ぶのかな」と遠くから見ている感じでした。見たことない、やったことないから、様子を見ていたんですね。それが3〜4週間と経つにつれて、みんなが夢中で遊ぶ姿に変わっていきました。

職員も一緒に、登って遊ぶSAPIENCE、揺れる動きを楽しむYURAGI、憩いの広場、芝を張った築山、そしてブランコと、日々の仕事の中で実際に体験する。そうすることで、子どもと同じ目線に立てたんです。今では子どもたちにとても寄り添えるように変わってきた、という報告が上がってきています。

室内ではBe-You KITTOやトランポリンでアクティブに体を動かし、外遊びは1日30〜40分ほどですが、その時間でも遊びきったという表情で部屋に入ってきます。お迎えに来た保護者の方に「今日はこういうことをやった」と、自分から話す。子どもが自ら言葉を発するようになったのは、私たちの想像以上に効果が出ているところです。

— 保護者の方にも、変化が伝わっているのですね。

坂田理事長:「最近うちの子が変わってきた、何をやっているんですか」というお尋ねが、ずっと続いています。職員の関わり方も、子どもと同じ視点に立って「この子はこう考えているのではないか」「こういうことを満たされたいのではないか」と、子どもの視点で明日の準備、あさっての準備ができるようになってきました。

障害の診断がついたから、うちの子はできないと思っていらっしゃる保護者の方もいます。それは置いておいて、経験や体験をしっかり積み重ねる。その中で「楽しかった、もう1回やってみよう」という気持ちの変化を出せた。ご家庭でも、子どもたちがたくさん話していると思います。

— 職員の採用や定着の面では、いかがでしょうか。

坂田理事長:職員採用にも、とても良い影響が出ています。離職が減りました。面談のときに「辞めたい」という声が、ほぼなくなったんです。私たちは、人にしかできない価値を提供する「ゴールドカラー」の仕事だと思っています。機械や仕組みに置き換えられない部分を、人間がやる。そこをネーミングや施設内の環境整備で、視覚からも耳からも伝えていく。そうすると、職員教育に時間がかからなくなります。

そこに1人ひとりの感性や個性、アイデアが加わって、さらにブラッシュアップできる。最近では、障害児の相談支援事業所という新規事業の展開も決まりました。「こういう考え方でやれるなら、ここに転職したい」という方も来てくださっています。

Creating a Garden

— 最後に、今後どのような園づくり、保育環境を目指していきたいとお考えですか。

坂田理事長:もっと現場をしっかり観察して、今まで気づけなかった細かいところに目を向けたい。0歳から、小学校を卒業してすぐの学童の子どもたちまで、経験を通して「僕はこうなりたい、こうしたい」と思える。将来こういう職人さんになりたい、学校の先生になりたいと、自分で将来を選択できるようになってほしい。そういう思いで、これからも環境整備をブラッシュアップしていきたいと考えています。全施設に入れると、7〜8年はかかると思います。

— 同じように課題を抱える経営者の方へ、メッセージをお願いします。

坂田理事長:迷ったときは、思い切ってやる。何か1つでもやることがとても大事だと感じました。お金だけの話で言えば、無駄になるかもしれない。けれど、無駄があるからこそ、答えが明確に見えてきます。

1人で考えると負担も大きいので、管理職層としっかり共有していくと、決断もしやすくなります。今年できなくても、来年、再来年と考え続けることが大事です。最終的には、お金のかかる重たい決断になります。けれど、その先にどんな笑顔があるかをイメージしたとき、これは思い切ってやるべきだと思いました。

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