社会福祉法人すくすくパートナー(山口県岩国市)が、保育園のすぐそばにあった旧家をリノベーションし、子育て世代と地域の人がつどうカフェ「cafeひろば」を2026年2月にオープン。ジャクエツは、設計から施工、家具までを一貫して手がけた。社会福祉法人がカフェを営むという前例の少ない取り組みは、どんな思いから生まれたのか。プロジェクトを率いた寺本園長に、お話を伺った。

地域に、ほっとひと息つける場所を

Principal

— この取り組みを始める前は、どんな課題を感じていましたか。

寺本園長:もともとは、この地域にほっとひと息つける場所がない、という話から始まりました。近くにおいしいお店はたくさんありますが、子どもを連れてゆっくりできる場所となると、なかなかありませんでした。お母さんやお父さんがお子さんと一緒に気楽に過ごせる。そんな場所が、この地域にはまだなかったんです。

— 子育て世代が、気兼ねなく過ごせる場所ということですね。

寺本園長:はい。コンセプトとしても、ママになってもカフェに行っていい、という思いがありました。おしゃれなカフェですと、子どもがぐずらないかと気になってゆっくりできないことがあります。まわりにパソコンで仕事をされている方がいたりすると、なおさら気をつかってしまいますよね。そこを気にせず、お子さんと一緒に過ごしていただきたい。地域のおじいちゃん、おばあちゃんにも来ていただきたい。いろいろな世代に集まっていただける場所にしたいと考えていました。

— お店には、子育ての相談に乗ってくださる方もいるそうですね。

寺本園長:店長は、私の幼なじみの女性です。カフェに来てくださった方には私たちからよく声を話しかけますし、店長も自然と子育ての話をしています。困っていることがあれば、専門の者にもつなげますし、ちょっとした相談ができる雰囲気をみんなでつくっています。お母さんが少し肩の力を抜ける、そんな場所になればと思っています。

— 課題を整理するなかで、セミナーなどにも参加されたと伺いました。

寺本園長:はい。ブランディングのセミナーには毎年お世話になっていて、いろいろな先生のお話を聞くなかで、私たちでもこうしたことができるのではないか、とヒントをいただきました。やりたいことを相談すると、下準備のところから一緒に考えていただけて、情報を集めながら構想を固めていきました。

旧家をリノベーション。子連れにやさしい座敷の空間に

Tatami Room

— 大きな工事になるなかで、ジャクエツに任せようと決めたきっかけは何だったのでしょうか。

寺本園長:ジャクエツさんの紹介で、静岡県浜松市にある先進的なカフェの事例を見学に行きました。実際に見て、私たちでもこうしたことができそうだと思えました。何より、一緒に考えながら細かく進めていけるところが大きく、ジャクエツさんにお願いしたいという気持ちになりました。相談できる相手がいることが、1番の決め手でした。

— コンサルや設計だけでなく、施工や家具まで一貫して私どもにお任せいただいたそうですね。

寺本園長:はい。ここはもともと普通の住宅でしたので、建築から家具まですべてを手がけていただきました。ひとつひとつ相談しながら進められたので、安心してお任せできました。

— 空間づくりで、印象に残っていることはありますか。

寺本園長:座敷のスタイルにしたことです。当初は、靴のままお入りいただくかたちもご提案いただいたのですが、女性の目線で、靴を脱いでワンフロアで過ごせる座敷のほうがよいという話になりました。これが、お子さん連れの方にたいへん喜んでいただいています。

テーブル席ですと食べたらすぐにお帰りになりがちですが、座敷ですと、もう少しゆっくりしていこうと感じていただけるようです。4人がけの席でも、大人がふたりに赤ちゃんを連れていらしたら、それでちょうどいっぱいになります。靴を脱いで、おしゃべりをしながら過ごせる。子ども連れの方を1番に考えた空間にしました。

menu

— メニューにも、地域らしさがあると伺いました。

寺本園長:看板メニューはチキン南蛮です。実は、私が学生のころにアルバイト先で作っていたもので、とてもおいしかったんです。そのお店はもうないのですが、それなら自分でやってみようと思いまして。地元の高森鶏を使っていて、近くの食鶏センターから、その日の朝に〆めた鶏を冷凍せずに届けていただいています。

地元には高森牛という有名な牛肉もあって、畜産をされているお店が出されているので牛では味でも値段でもかないません。それなら、うちは鶏でいこうと。地域の食を生かしたものを、おいしく召し上がっていただけたらと思っています。

園と地域をつなぐ、「ひろば」へ

Plaza

— オープン後、保護者の方や地域の方の様子に変化はありましたか。

寺本園長:在園している子だけでなく、地域のお子さんや保護者の方が気軽に遊びに来てくださるようになりました。こちらからお声がけすることも多く、子育てのご相談を受けることもあります。

併設している子育て支援センターと行き来できますので、支援センターにいらしたついでにカフェにお寄りいただいたり、反対にカフェに来たいから支援センターにも顔を出してくださったり。支援センターを利用された方には割引もご用意して、行き来しやすいようにしています。ありがたいことに、支援センターとカフェの両方を使ってくださる方が増えて駐車場を広げる工事もしたほどです。

— カフェが、地域の活動の場にもなっているそうですね。

寺本園長:はい。たとえばベビーマッサージの先生がここで教室を開きたいとおっしゃってくださって、午前中にイベントをして、そのままお昼を召し上がっていただく、という使い方も生まれています。先生のことを知っている方が新しく来てくださったり、参加された方がカフェを覚えてくださったり。場所をひらいておくことで、いろいろなつながりが広がっていきます。

— 採用や、人とのつながりの面でも手ごたえがあるそうですね。

寺本園長:学生さんにアルバイトに来ていただいており、そこから就職につながることもあります。保育園のアルバイトはハードルが高いのですが、カフェからですと入りやすい。親しくなるなかで、自然と仕事のお話もできます。

以前は、学生さんと知り合う機会といえば、就職フェアで1度お会いした方にお声がけするくらいでした。それがいまは、学生さんから学生さんへと、つながりが広がっていっています。

職員にとっても、福利厚生で食事に来たり、ここを使えたりする場になりました。近くの高校から実習に来てくれることもあるので、その学生さんにもカフェのことをお話ししています。これまで接点のなかった方とつながれる、関係人口が広がっていく実感があります。

— 最後に、これからの展望を聞かせてください。

寺本園長:いろいろな世代が交わる場所にしていきたいです。地域のお年寄りは朝が早く、5時や6時には動いていらっしゃる方も多いので、週に1度でもモーニングをやってみたいですね。テイクアウトやお弁当の販売も、検討しているところです。

それから、小学生が安心して過ごせる居場所もつくれたらと思っています。子どもだけだと入りにくいお店も多くて、そうした場所が少なくなっていますから。オセロなどを置いて、放課後にのんびり過ごせるような。英語など、学びとも関連づけて広げていけたらとも考えています。

このカフェの名前は「cafeひろば」といいまして、いろいろな人が集まる広場になれば、という思いを込めています。保育園と、どうつなげていくか。これからも考えていきたいですね。

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