J-ARCHITECT
JAKUETS Architectural Design Magazine
Vol.33

「小さな家」の集合体 未来を育むあそびにあふれた園舎

学校法人 石川学園 幼保連携型認定こども園 いけがみだいようちえん

Kindergarten building
南側外観。3層ガラス張りのホール棟を中心に園庭を包むように建つ新園舎。道路からセットバックさせて植栽帯を新たにつくり、カンヒザクラ、シダレザクラ、ハナミズキなど季節ごとに街並みを彩る植栽を施した。

豊かな自然環境と生活利便性の高さから子育て世代にも人気の愛知県名古屋市緑区に、1978年(昭和53年)に開園した池上台幼稚園が、園舎を建替えて2025年より幼保連携型認定こども園いけがみだいようちえんとなりました。異なる形・大きさを組み合わせた建物形状を持つ新園舎は、園庭も園内もたくさんのあそびにあふれています。

個性的な園舎、2つの園庭であそびを広げる

「あそびはこどもたちの未来のために」。創設時より“あそび”を教育理念の中心に掲げてきた池上台幼稚園は、2年の工事期間を経て新園舎に建替え、同時に幼保連携型認定こども園へ移行して名称も改め、2025年4月より「いけがみだいようちえん」として新たなスタートをきりました。

定員300人を超える幼稚園のこども園化と建替えは、立案から竣工まで7年を要する長く大きい事業となり、ジャクエツは認定こども園化へのサポートも含めて総合的に関わらせていただきました。築40年を過ぎた旧園舎は老朽化や耐震性を踏まえて全面建替えとなり、園庭に仮設園舎を建てて保育を続けながら、2期に分けて新園舎を建設するプランが採用されました。

東側が高くなっている敷地の北東に増築された遊戯ホールはそのまま残して使っていくことになり、樹木が生い茂っていた東南の一画は施工期間中の園庭とするため苦渋の決断で伐採しましたが、施工後は第二の園庭として、築山やツリーハウス、ローラー滑り台などを設えた「ぼうけんのもり」に生まれ変わりました。

新園舎は、敷地北西の角に沿ってL字型だった旧園舎とは逆に、北から東へカーブを描く配置で、保育室は全室南向きのプランとし、鳥が大きく羽を広げた姿をイメージしました。また、この園らしい個性と独自性を園舎にも表現したいという要望から、デザイン監修に株式会社プラネットデザインアンドコンサルティングに参加いただき、外観は住宅街という場所性を考慮して、大きさや形の異なる小さな家の集合体をコンセプトに多彩な素材で仕上げました。

子どもたちには本物を触れさせたい、という要望も園舎内外に取り入れ、外壁にはタイルや石も使用しています。メイン玄関と園バスの乗降スペースは、交通量の少ない北側の道路にとり、建物をセットバックして安全通路を確保しました。西側、南側の道路も同様に塀をセットバックさせて植栽帯を設け、シダレザクラやハナミズキなど四季の移ろいを感じられる木々や花を植え街並みに溶け込むようにしています。

Entrance Hall
吹抜けのエントランスホール。石やタイルで彩ったシックなインテリア。風除室には出欠確認を自動化するシステムを導入し、セキュリティ面強化と登降園時の混雑緩和を図っている。右の扉は園バスからの登園口。
North Elevation
北側外観。周辺環境に馴染むよう、小さな建物の集合体のようなデザインとした。駐車場からのアプローチを兼ねた通路を設けて、安全性も高めている。

園舎内に設けた多種多様なあそび場

四角四面ではない、やわらかな線で描かれている間取りは、いけがみだいようちえんの個性の表れといえるでしょう。建築自体があそびを喚起させる、わくわくさせる空間を目指しました。様々なあそびの中の幅広い体験を通して成長を促し、本物に触れて感性を磨くといった理念を表現しています。

エントランスは、風除室を広くとり、登降園時の混雑緩和とセキュリティ面にも配慮しました。吹抜けのエントランスホールに入ると、園舎の中心部となる3層吹抜けのセンターホールが広がります。光が降り注ぐセンターホールには、靴箱と階段があり、ここから各保育室へと移動していきます。

1階には、1歳児から3歳児の保育室と、職員室、厨房を配置しました。多面体のようなユニークな空間の保育室は、トイレを間に挟んで2室を1セットとしたつくりです。可動間仕切りとなっているので、1室にしての保育も可能です。そして、保育室の一角には、あそびの場にもエスケープスペースにもなるDENを組み入れました。南の園庭側は軒を広くとって外履き用の靴箱を設け、各保育室から直接、園庭に出られるようにしています。

広くゆったりつくられた園内にも様々なあそびをちりばめました。センターホールの階段下には、クライミングウォールや秘密基地のようなDENなどあそびの場を造作しています。移動も楽しくなるよう、3歳児保育室の廊下には虹色に調光する照明を仕込んだり、厨房は廊下に面したガラス張りにして調理の様子が見えるようにしました。

Shoe cabinet
エントランス入って正面のセンターホールに靴箱を配置した。エントランス正面の壁には、100号サイズの絵画を飾ることができるニッチを設けている。
Stage
センターホールの要となるダイナミックな階段。踊り場の右奥から遊戯ホールへのデッキが繋がる。
Under the eaves
にじのトンネルと名付けた3歳児保育室の廊下。赤、緑、橙、青、黄など虹色に変わる照明を仕込んでいる。
Picture Book Castle
えほんの城。約5000冊もの絵本を収納し、本を読む場所を子ども自身が見つけられるような空間をデザインした。
DEN
保育室の一角に造作したDEN。籠もれるスペースと共に階段や登り棒など身体を使う遊具も組み入れた。

デザインから健康面まで、判断基準は子ども目線

2階には、絵本コーナーと4歳児、5歳児の保育室、会議室などを配置しました。階段を内包する吹抜けのセンターホールは上からも下からも光が入り、とても気持ちのいい空間となっています。また、別棟の遊戯ホールとは階段の踊場で繋がっています。

階段横に設けた「えほんの城」は約5000冊の絵本を蔵書しています。ただ本棚をつくるのではなく、本棚自体に子どもたちが入り込んで本を読めるようにあそびの要素を取り入れ、思い思いに楽しめる空間にしました。

保育室は1階と同様、トイレを間に挟み、可動間仕切りで仕切った2室1セットのつくりです。園庭側は園を一望できる観覧スペースとしても使えるよう、テラスを設けています。

3階は屋上園庭として、プールエリア、乳児専用エリア、植栽帯があるくつろぎエリアを設けました。園庭は、広々とあそべる「げんきっこひろば」と、活発にあそべる「ぼうけんのもり」の2つのエリアを計画し、子どもたちにとって、のびのびと楽しくあそべる環境を整備しました。

常に子ども目線に立ち、判断基準は子どもたちにとって良いものであるかどうかという新園舎づくりは、個性的なデザインや本物の素材といった可視化できる表現から、全室床暖房の導入など目には見えない健康面へのこだわりまで、細心の配慮と愛情にあふれるものでした。子どもは鳳雛(ほうすい=鳳凰のひな、転じて将来有望な若者)と語る石川園長。その子どもたちを守り未来を育む大きな羽となる園舎ができました。

Adventure Forest
ぼうけんのもり。2つの築山にツリーハウス、ローラー滑り台、丸太のジャングルジムなど身体を多様に使う遊具を配置した。
Genkikko Plaza
げんきっこひろば。トラックの周りには、ジャクエツオリジナル遊具の「HECHIMA」と「SAPIENCE」を設置した。子どもたちは、ぼうけんのもりも含めて、自分であそびを選び、思い思いのあそび方をしている。
Rooftop Garden
西側の屋上園庭。年齢児ごとにプールを設け、上部にタープをかけられるようにしている。
Sun Deck
1階センターホールの園庭側に設けたおひさまデッキ。ベンチに座って園庭の様子を眺めることもできる。
Various Games
階段下に造作した様々なあそび。クライミングウォールやDEN、お店屋さんなど、楽しい仕掛けに籠もれる空間も盛り込まれている。

DATA 学校法人 石川学園「いけがみだいようちえん」

所在地愛知県名古屋市緑区
主要用途幼保連携型認定こども園
定員330名
竣工2025年3月
……
構造鉄骨造3階建て
敷地面積3381.41㎡
建築面積1143.74㎡
延床面積1998.24㎡

IMPRESSION ─ 建設を終えて

Chairperson and Director

学校法人 石川学園 幼保連携型認定こども園 いけがみだいようちえん
理事長・園長 石川信広氏

私たちの想いを総合力で実現してもらえました

当園は2025年で創立47年を迎えました。ジャクエツさんとは開園2年後くらいからの長いおつきあいになります。折紙や画用紙など紙類の教材から始まって、旧園舎ではトイレの改修をお願いしました。熱心な営業担当者さんとの人間的な付き合いに加えて、トイレの改修ではこれまでにないようなアイデアをたくさん出してくれ、ジャクエツさんの立案力をすごく感じました。

それで、当学園が運営する幼保連携型認定こども園「みらいの風こども園」(2017年開園、J-ARCHITECT 第1号掲載)をジャクエツさんに設計してもらったんです。その時にジャクエツさんの設計力、提案力は実証済みでしたから、この園の建替えを検討し始めた段階でジャクエツさんに声を掛け、迷いなく設計をお願いしました。

特に今回は、建物の建替えと同時に、幼保連携型認定こども園への移行も計画しなければなりませんでしたので、行政との折衝など私達が経験したことのない課題もありました。定員300人以上の大規模な幼稚園の認定こども園化にあたり、行政側とのやりとりもジャクエツさんにフォローしていただきました。

そこは自分たちの想いだけでは進めることは困難で、ジャクエツさんの総合力に助けられたと感じています。この事業は、設計者、施工者と関わっていただいた方々の誰一人が欠けても成し遂げられなかったと思っています。

建物に関しては、開放感と木・石・土など天然素材にこだわりました。特に建物の内部については、子どもたちが長く過ごす場でもあるので、楽しめる仕掛けをあちこちに分散させて子どもたちがあそび場を探索できるようなイメージを要望しました。

当園は、あそび場は子ども自身でつくるという発想なので、子どもがそれぞれ自分で考えてあそんでいます。1番人気なのは「ぼうけんのもり」。築山やローラー滑り台など、自分であそびが工夫できるところがよいようです。安全面も非常に良く考えられているので、思いっきりあそぶ子どもたちを、安心して見守ることができます。

設計士 株式会社プラネットデザインアンドコンサルティング 代表 白崎 裕 氏

Designer

緑の中で風・土・太陽を感じる日常、ぼうけんのもりと園舎が融合・・・。相反するアイテム(光影・自然人工・定型不定形・有彩色・無彩色等)で構成された園舎は園児の五感に絶えず刺激を与えている。また、建築は園児・教員・保護者が幸せな関係性を保てる『呼応性』(園児⇔教員⇔保護者⇔園舎⇔自然環境)を持たせた。凸凹壁は「小さな建物の群れ」を表現し多様な素材ででき、自分だけの『建物』を発見できる。

JAKUETS

設計監修 福井本社 建築設計課 佐伯祐樹

Design Supervision

石川学園様から2回目というご縁をいただきました。市役所の施策と幼保連携型認定こども園への移行に伴う定員設定や補助金等の調整、園舎設計での全体チームづくりなど事業の隙間を埋める、つなぐ役割を担当いたしました。石川理事長の判断力に感銘し、とてもすばらしい事業にご一緒できたことを感謝しております。

設計士 名古屋設計事務所 建築設計課 堀 貴雄

Designer

みらいの風こども園様に引き続き担当させていただきました。園を創立された時から変わらない理事長先生の子どもたちに対する想いを具現化し、変わりながら変わらない価値を創造することができました。子どもたちの未来を育む環境づくりに携わることができ嬉しく思います。

ディレクター 名古屋店 碇 晃

Director

理事長先生が考えられていたあそびへの探求心、本物志向、高い美的感性をお持ちの理事長先生からいただく課題に頭を抱えることも沢山ありましたが、それを現実化させることが寧ろ楽しく、意匠や素材選びをさせていただきました。この園舎をあそび尽くし、元気に成長してくれることを願っています。

設計士 名古屋設計事務所 建築設計課 松本 創

Designer

子どもたちにとっての最高のあそび環境をつくるために、何度も何度も提案と試行錯誤を重ねました。その想いは園舎の中にも園庭にも多種多様に散りばめられており、限りある時間の中で苦労もありましたが、ジャクエツの強みを最大限発揮できたと思います。

2026年1月発行
発行:株式会社ジャクエツ
A2016-0700-14771