宮城県黒川郡大和町のすみれの花こども園が、砂地だった園庭を人工芝へと一新し、あわせて築山を設けた。砂が舞い、石が浮き、子どもたちの遊びを制限せざるを得なかった園庭は、転んでも痛くない緑の広場へと姿を変えた。砂の園庭が抱えていた課題は、どのように整理されどんな選択を経て今の姿にたどり着いたのか。園長の遠藤真一郎さんと主幹の永澤さん、副主幹の河又さんにお話を伺った。
砂の園庭が抱えていた課題

— 人工芝を敷かれる前、園庭はどのような状況だったのでしょうか。
遠藤園長:園庭そのものは砂地でした。ここは風も強くて、乾燥していると砂が舞うんです。近隣にも飛んでいってしまう。それに、砂が飛ぶと固い地面が出てきてしまうんですね。転んだときに膝をすりむいたり、大きな怪我につながったりということがありました。
それから、暗渠の工事をした関係だと思うのですが、子どもたちが使っていると下から石が浮いてくるんです。パイプの周りはどうしても石ですから。定期的に石拾いをしなければいけませんでしたし、石が散らばっていると子どもたちもダイナミックに遊べない。職員も気を使うという問題がありました。
— 実際の保育の中でも、困りごとはあったのでしょうか。
永澤主幹:0歳児からお預かりしているので、砂だと何でも口に入れてしまう時期の子がいます。まだ遊具でも遊べず、はいはいでの移動になると、砂が1番口に入れやすいものになってしまう。歩けない子は靴も履けないので、砂の上に大きなブルーシートを敷いて、その上でしか遊べませんでした。どうしても子どもたちの活動に制限がかかってしまうんです。
大きい子のクラスを受け持っていたときは、走れるようになってくる年齢ですから、広い園庭でダイナミックに走ります。でも石につまずいて転んでしまったり、転んだ先に石があって血が出る怪我につながったり。子どもたちが石を拾い集めてくれることもありましたが、拾っても拾っても出てくる。遊ぶ場所を限ってしまうこともありました。
人工芝という選択、そして築山の決断

— 課題に対して、まずはどのように対応されていたのでしょうか。
永澤主幹:ひとまず定期的に石を拾って、砂を口に入れないようにブルーシートで対応して、という形でした。ただ、この広さですから抜本的な解決は難しくて。ブルーシートを買ってきても足りませんし、常に「どうしていこうか」と考えているところでした。
— 人工芝にしようというお話は、どのように進んでいったのでしょうか。
遠藤園長:ジャクエツの担当の方とは普段からいろいろな話をしていて、その中で実績の事例を見せてもらったり、人工芝の話が日々出てきたりしていました。私自身も人工芝は考えていたので相談したところ、いろいろな園の事例を見せてもらったり、実際に人工芝を敷いている園へ直接見に行ったりと、いくつも提案してもらいました。その中で「やってみてもいいかな」という形になっていきました。
— 人工芝のほかに、比較した選択肢はあったのでしょうか。
遠藤園長:天然芝やゴムチップの話も出ました。天然芝は、どうしても手入れが大変なんです。水をまいたり、伸びたら刈ったり。生きているので伸びもすれば枯れもしますし、根付くまでの期間は園庭が使えない。走り回ると1か所だけ芝がなくなる、ということもあります。そういう話を聞いているうちに、やはり人工芝のほうがいいのかな、と。
ゴムチップは、この面積を全面にとなると、景観や費用の面もありました。それに、ここは隣にスーパーがあって車通りも多く、子育て世代の方も買い物に来る、結構目につく場所なんです。だから園庭の見え方も良くして、目立たせたいという思いもありました。その点でも、人工芝のほうが景観はいいかなと考えました。

— 築山は、もともとあったものではなく、このときに新しく作られたのですね。
遠藤園長:ジャクエツの担当の方に提案されました。ただ、入れるか入れないかは結構迷いましたね。真っ平らにしたほうが見た感じも良くて、子どもたちも走り回れる。真ん中にドーンとあると保育活動の邪魔になるのかな、とも考えて、職員間でもずいぶん相談しました。
河又副主幹:高さがあると、上から落ちたらどうだろう、という不安もありました。ただ、もしお山があったらどんな活動ができるだろうと考えたとき、平面じゃないからこそできることがすごく増えるな、と思ったんです。
たとえば0歳児は遊具に年齢制限があって滑り台を滑ることはほとんどないのですが、お山があれば自分で登れるし、滑ることもできる。平面だと走るか歩くかになってしまって、走れない子は遊ぶものがなくなってしまう。山があったほうが遊びの幅も広がると考えて、最終的に「あったほうがいい」となりました。
— 工事はどのくらいの期間だったのでしょうか。
遠藤園長:1か月ほどです。これだけ広い面積が日々変わっていく様子は、見ていて期待感が上がっていきました。子どもたちも、重機が入るとワーッと集まってきて、「あれがクレーン車だよ」と言いながら見ていました。大きなロールの実が運び込まれてくると歓声が上がって。「いつ遊べるの?」と、園庭の完成を楽しみに待っている姿がたくさんありました。
人工芝と築山がもたらした変化

— 実際に人工芝にしてみて、効果はありましたか。
遠藤園長:まず子どもたちの遊びが変わりました。今までは砂場での1人遊びが結構多かったのですが、砂場がなくなったことで、お友達とコミュニケーションを取る活動が増えたんです。自分たちでいろいろな遊びを考えて、話し合いながら遊びを作っていく。そういう活動が増えたと感じています。
それから、すごく走り回るようになりました。転んでも痛くないので、寝転がったり、思い切り走っていったり。激しく体を動かして遊ぶ活動が増えましたね。石を拾う必要もなくなりましたし、砂のときは保育室に戻ると廊下が砂だらけになって、その都度きれいにしていたのですが、それもなくなりました。ブルーシートを敷かなくてよくなったので、先生たちも子どもたちを外に出しやすくなって、外で遊ぶ機会そのものが前より増えたように感じます。
河又副主幹:芝生になってから、子どもたちが「これ出して、あれ出して」と言うことが少なくなったのが印象的でした。物がなくても、自分たちで遊びを広げていくんです。鬼ごっこでも「お山ありのルールにしよう」「鬼は上で待っててね」と、自分たちで山や芝生を使いながら新しいルールを足して遊びを展開していく。今までの遊びではできなかった友達関係の広がりや、遊びを考える力が育まれている部分があるのかな、という印象を持っています。
河又副主幹:築山も、あって良かったと思っています。0歳児も高い築山を自分で登っていますし、あそこでしかできない経験が、子どもの身体的な能力にもつながっている。楽しく遊べる要因にもなっていて、今のところ不満はありません。

遠藤園長:砂が舞っていた頃は、近隣の洗濯物に砂が引っかかるといったお声をいただくこともありました。今はそうした心配もなくなりました。環境というのは、自分たちが我慢すればいいということではなくて、周りの方にも影響があるものです。その改善が、子どもたちの日々の生活や保育にもいい形でつながっているのは、ありがたいことだと思っています。
— 今後、園庭をこうしていきたいという思いはありますか。
遠藤園長:園庭がとても緑になったので、この緑を主役にして、周りの色合いや造作も含めて、見た目をもっと良くしていけたらと考えています。園庭を見て「この園に入れたい」「この園に興味があるな」と思ってもらえるような園庭にしていってもいいのかな、と。今回お話しする中で、改めてそう感じました。




