JAKUETS COMMUNICATION MAGAZINE
いぬはりこNEWS vol.31

十三の森が育む、地域と子どもの絆

outer wall
マンションや幹線道路に囲まれた場所で、温かみのある森のようになるようにデザインされている。

都市化が進む大阪市十三地区に、緑豊かなオアシスのような保育園があります。「十三の森」をコンセプトにリノベーションを施した、十三保育園。トイレから外壁、廊下へと段階的にリノベーションを進め、子どもの居心地と地域との調和を大切にした園に生まれ変わりました。子どもたちの日常に寄り添い、地域の憩いの場となる空間作りについて、園長に伺いました。

執筆:猪狩はな 写真:祐實知明

Principal
インタビュー
十三保育園 園長

目指したのは、園の個性を形にするリノベーション

本園がリノベーションを考え始めたとき、「子どもたちがもっと快適に過ごせる空間を作りたい」「ただ改修するだけでなく、子どもにとって居心地がよく、行くのが楽しみになる場所に」という思いがありました。

昭和58年に開所した園舎は、古さが目立つ作りで、早急な改善が必要でした。中でもトイレは子どもたちが毎日使う場所なので、改修はトイレからスタート。徐々に外壁、廊下、給食室へと進めていくことになりました。

段階的なリノベーションでも園の世界観がバラバラにならなかったのは、「十三の森」という明確なテーマ設定が事前にあったからだと思います。「自然豊かな園庭に合わせて、森のイメージで統一しましょう」と、園の特色を出せる案をジャクエツさんから提案いただけたのがよかったです。

明るさと安心が広がる、地域の憩いの場を目指して

十三地区は今、マンションなどの高層ビルが建ち並んで、どんどん都市化が進んでいます。あと5年もすれば、さらに開発が進むでしょう。そんな中で「保育園と園庭の緑が地域の憩いの場所になってほしい」「保育園を、地域の人にとって親しみのあるランドマークにしたい」という思いが、建物全体のデザインに反映されています。

トイレは改修によって寒さや使いにくさが解消されただけでなく、子どもたちが行きたくなるデザインにできました。外壁は、園の象徴となる木のデザインにしています。木の幹は大人の手のひらをイメージし、葉っぱは子どもたち。一つとして同じ形のない葉には、「地域の方と先生方が、個性ある子どもたちをそれぞれ支える」という願いが込められています。

工事期間中、子どもたちにはどう変わるかは「お楽しみ」として伝えず、工事の囲いが取れたときに初めて見せました。子どもたちは「わぁ!」と驚き、とても喜んでいましたね。

地域の方々も完成を楽しみに待っていてくださって、「きれいになったね」と声をかけてくださりました。夕方以降のライトアップは、夜に園の前を通る方に「明るくて安心する」と言っていただいています。保育園が地域の防犯にもつながっていると実感できてうれしいです。

Restroom
天井はアーチ形にして広く感じられる空間にし、明るくて使いやすいトイレになった。
Restroom
蛇口は自動水栓で、感染対策のほか、蛇口を閉めきれずに水が流れたままにならないようにした。
Restroom
トイレの入り口にも動物たちの絵を施して、子どもたちがトイレに入りやすい雰囲気を作った。

通るたびに学びが生まれる「食育ロード」

Hallway
廊下からつながるクマの足跡が給食室へと向かっている。板でデザインしたパネルで森の中にいるようにデザインされている。

給食室への道を 食への興味の入口に

本園で特に力を入れているのは食育です。子どもたちが食への関心を深められる場を作りたいと考え、給食室へと続く廊下を「食育ロード」に改修しました。

日々の保育のなかで、子どもたちは野菜ができる過程に関わったり、育てたものを実際に味わったりしています。たとえば、毎年お味噌作りと梅干し作りを行うほか、園庭で大根、ごぼう、白菜、さつま芋、里芋など、季節に合わせた野菜を育てています。秋にはお味噌と里芋を使って、芋煮会もするんです。

「食育ロード」ができて給食室の様子が見えるようになり、野菜がどのように給食になるのかがより身近になったと思います。また、赤・黄・緑で栄養素を色分けしたボードを設置したことで、「お肉は赤の仲間だね」といったやりとりが自然に生まれています。

子どもたちから栄養士の先生に積極的に話しかけてくれるようになりましたし、子どもたちに「これはどの仲間?」と問いかける場面も増えました。日常的なやりとりの中で、子どもたちが食べ物について興味を持ち、自然と知識を身につけてくれていると感じます。

廊下が明るく開かれた空間になったことで、保護者にも園の食育の取り組みを伝えやすくなり、見学や行事の際の会話も広がりました。

Hallway
黄色が炭水化物、赤がタンパク質、緑がビタミン・食物繊維に分かれたボード。その日の献立に使われた食材が貼られる。

地域との絆を強め、次世代につなぐ保育園を作る

「地域で子どもを見守る」というのが、私たちのもう一つのテーマです。支援の場として、地域に愛される存在でありたい。子どもだけでなく、ご年配の方にとっても、地域の交流の場となるような開かれ方ができたらと思っています。

本法人へ移管して10年が経ちましたが、地域とのつながりを深めるために園ができることは、まだまだあると感じています。これからも地域の方々をお招きし、子どもたちとの交流を続けていきたいです。今後は、これまで以上にこちらからの発信も増やしていきたいですね。また、卒園後も保護者とご縁を大切にして、一緒に子どもの見守りを考えていける場になれたら素敵だなと思っています。

園と地域との絆が次世代へとつながり、それがずっと輪になっていく――。地域で子どもを見守り、支え合う関係性を、世代を超えて継承していくことを目指しています。リノベーションで実現できた明るく開かれた空間が、これからもその中心となってくれることを期待しています。

Hallway
ゴムチップ舗装を施すことで、転倒時の衝撃をやわらげ、安全性を高めた。また、足元にやさしい弾力と温かみが生まれ、季節を問わず心地よく過ごせる廊下にした。
Name tag
各部屋の室名札。
Exterior
夜になるとライトアップされる。お迎えの保護者、地域の方の安全対策にもなっている。
Meal Planner
給食の献立ケース。その日の普通食と離乳食が置かれる。子どもたちはここを見るのが楽しみ。
Characters
左から事務長、園長、大阪中央店原店長代理、リノベーション課湯次担当。

2026年1月発行
発行:株式会社ジャクエツ
J2016-0800-22165