J-ARCHITECT
JAKUETS Architectural Design Magazine
Vol.29

3つの園庭を持つ、階段状の園舎

学校法人 龍拈寺学園 幼保連携型認定こども園 豊橋中央幼稚園

Three-story kindergarten building
階段状になった3階建て園舎。地面に設けた1階園庭に加え、2階はゴムチップ、3階は人工芝の屋上園庭を設けた。
各園庭は、左奥の遊具「わくわくツリー」と階段でつながる。

愛知県豊橋市で120年以上の歴史を刻んできた豊橋中央幼稚園。
幼稚園で長く培ってきた教育・保育理念を軸に、園舎を建て替えて認定こども園へと移行しました。
まち中の限られた敷地ながら、設計の力でたくさんのあそびの場を設えた新園舎となりました。

屋上園庭で、 たくさんのあそびの場を生み出す

愛知県豊橋市の中心部からもほど近い住宅街に立つ豊橋中央幼稚園。隣接する龍拈寺を母体とする同園は、明治34年(1901年)に創設され、120年以上に及ぶ長い歴史の中で、地域に根ざした保育・幼児教育に尽力してきました。

戦後は保育園を経て認可幼稚園となり、園舎は増改築・改装を重ねてきましたが、社会や制度の変化と園舎の老朽化を鑑み、令和6年(2024年)より幼保連携型認定こども園として新園舎で新たなスタートをきりました。

新園舎は、旧園舎を取り壊し、更地にして建設しました。建替え中の保育は、道を挟んだ向かいにある園庭に建てた仮園舎と、その隣のお寺に間借りして行いました。

設計で大きなテーマとなったのは、園からの要望である「たくさんのあそび場」をどう設け、あそびが途切れることなくどうつなげるか、ということでした。向かいの園庭は交通量のある道路を渡らなければならないので、できたら敷地内に園庭を納めたい。

でも、認定こども園として必要な保育室数や設備を盛り込むと建物が大きくなってしまう。そういった難題を解消すべく様々なアプローチを試みた結果たどり着いたのが、2階と3階に屋上園庭を設けた階段状の3階建て園舎でした。

3つの園庭は、地面の1階は“はらっぱ”をテーマに、2階はゴムチップ、3階は人工芝と素材を変えて、運動やあそび、また天候によって使い分けることができるようにしました。そして、各園庭はその階から直接出入りできるのはもちろん、外部は遊具と外階段でつなげ、1階から3階まで移動できるようになっています。

1階地面の園庭は以前より狭くなりましたが、3つの園庭を合わせた面積は規定を満たしていて、日々のあそびは園内で十二分に可能です。向かいの園庭は運動会などの大きな行事や地域のイベントにも活用できるという、まち中の園としてはゆとりある贅沢なスペースとなりました。

East Facade
東側外観。高さ制限3階建てまでの地域で、階段状になっていることで周辺に圧迫感を与えない建物ともなっている。
Northwest exterior
3階まである北西側の外観。シンプルで軽やかな佇まい。
1階は木格子のパーティションで安全と美観を両立。

あそびのスムーズな動線で、空間の使い勝手も向上

スムーズな動線は、園庭に限らず、内部においても、また内と外のつながりにおいても大事に設計したところです。あそびの場をたくさんつくってもそれが点在していては、子どもの感情が途切れて意欲を失ってしまうこともあるので、できるだけシームレスにつなぐことを心掛けました。それが、職員や保護者の使い勝手にも大きく関わってくることでもあるからです。

1階には、0歳児から満3歳児の保育室と、職員室、給食室に加え、会議室やホールといった外部の方々が訪れる機会も多い空間をまとめました。玄関から低年齢児の保育室までの廊下の床はカーペットにして、保護者が土足のままベビーカーで入ってくることもOKとしています。日常は体操教室や低年齢児のあそび場として使われているみなもホールは、給食室に接していてランチルームとしても活用可能。玄関からも直結し、隣の2つの会議室とつなげることもできるので、地域のイベントなどにも使用できます。

2階には、3歳児から5歳児の保育室と職員の休憩室を置きました。1階からは階段で移動しますが、子ども達が必ず通る1階階段室の隣の絵本コーナーにはお地蔵さまを設置して、子ども達が登降園時にごあいさつができるようにしました。

以前からの園の慣習を自然な流れでプランに組み入れています。職員の休憩室は、1階職員室と螺旋階段でつながっているので、端にある階段まで行かずに職員室からすぐ2階保育室まで移動が可能で、室内からは2階園庭の様子を見ることもできます。

3階は、ホールと会議室のみです。あおぞらホールは、開口部を全開すると人工芝の園庭と一体になり、開放感あふれる大空間となります。運動ができる設備はもちろんのこと、音楽教育にも注力している園の要望で舞台裏には子ども達で出し入れできる楽器の収納庫も設けました。

1階から3階まで内部は階段とエレベーターで移動し、その反対側では各階とも園庭とつながっているので、全体がぐるっと回遊できる行き止まりのないプランとなっています。

Entrance
エントランス。カーペットが敷かれているところは土足が可能で右の廊下に続く。
左壁の向こうは下足コーナー。
Hallway in front of the nursery room
1階、0~満3歳児の保育室前の廊下。保護者はここまで土足で入ることができる。
カーペットは飛び石のように各保育室前に違うカラーを配色。
Daycare Room for Children 0–1 Years Old
0~1歳児の保育室。園庭に面している角部屋で、直接、園庭に出られる。
内部の収納家具は可動式で、保育内容や先生方の使い勝手に合わせて配置している。
Preschool Classroom for Three-Year-Olds
満3歳児の保育室。隣は2歳児の保育室で間に共用のトイレを設けている。
hall
みなもホール、2つの会議室とつなげた状態。
エントランスに直結するこのホールは、内外どこからもアクセスがよく、運動教室や発表会の練習など日頃からよく使われている。隣(舞台、収納棚の向こう側)は給食室。
Block B Wall
給食室の廊下側の壁に設けたBブロックウォール。右は絵本コーナー。
動線上にあるこの場所に、お地蔵さまを納めた。登降園時、毎日子ども達はごあいさつをする。
Stairs
2階への内部動線となる階段。幅広く、ゆとりをもって設けた。
隣にエレベーターも設置している。
DEN
2階、廊下に設けたDEN。数人しか入れない小さな空間に、上からのぞける窓を設けている。
Blue Sky Hall
3階のあおぞらホール。日常の運動やあそび場としてはもちろん、入学式、卒業式、音楽発表会など大きな行事に使われている。
舞台裏には楽器を収納する大きな倉庫を設けた。
playground
2階、ゴムチップの園庭。住宅街とは思えない、大きな空が広がる。

シンプルモダンの建築に、インテリアデザインでやわらかさを加味

通りから見る園舎は、シンプルなフォルムにモノトーンカラーのシックな佇まいです。お寺との調和も計ったエントランス回りの格子は、子ども達の飛び出し防止と目隠しとしての機能と美観を兼ねています。

インテリアは木と白をベースとしたシンプルな空間に、品格あるスタイリッシュさや、この園が醸し出すやわらかさや明るい雰囲気を加味しました。ところどころにブルーを用いているのは、園のシンボルマークがタツノオトシゴであるところから海をイメージしたものです。

例えば、1階エントランスから保育室へと続くブルーのカーペットは、水の流れを表すようにグラデーションをつけ、飛び石のようにグリーンなど馴染みのいいカラーを配しました。

そして、保育室は、天井の照明器具の配置でその保育室の児齢を表現しています。3歳児は三角形の光、4歳児は四角形の光、5歳児は放射状の5本の光です。感覚的なおもしろさを子ども達に受け取ってもらえたらという意図です。

 また、あそびのしかけもデザインしました。2階の廊下につくった DEN です。数人しか入れない小さな空間は、ちょっと心を休めたい時にも寄り添ってくれる場となっています。

 保育室の間に配置したトイレは、子ども達が不安にならないよう明るく賑やかな雰囲気を演出しました。3歳児が太陽、4歳児が山、5歳児が空といずれも自然をテーマにデザインし、壁紙や取手など全部違うものを用いています。

 大胆に屋上園庭を設けた特徴的な園舎は、つながりを重視したゾーニングにやわらかなデザインを効かせることで、園長先生曰く「誰にとっても優しい建築」に仕上がりました。

Nursery Room
5歳児の保育室。
5歳児の保育室。
3歳児の保育室。
Nursery Room
4歳児の保育室。
保育室は木材を多用した落ちついた空間に。照明の形で年齢がわかるデザインを考えた。
Restroom
2階、4歳児のトイレ。山をテーマに植物が描かれた壁紙を選んだ。
Staff Room
職員室。2階の休憩室とは螺旋階段で直接行き来できる。
Kindergarten building
園舎を真上から見る。素材の違う3つの園庭が並ぶ。

平面図1/400

Floor plan
1階
Floor plan
2階
Floor plan
3階

DATA 学校法人 龍拈寺学園 幼保連携型認定こども園
「豊橋中央幼稚園」

所在地愛知県豊橋市新吉町6
主要用途幼保連携型認定こども園
定員241名
竣工2024年3月
……
構造鉄骨造3階建て
敷地面積1378.59㎡
建築面積883.94㎡
延床面積1688.38㎡

IMPRESSION ─建設を終えて

学校法人 龍拈寺学園 幼保連携型 認定こども園
豊橋中央幼稚園

事務長 附柴尚雄氏

Administrative Director

不安なく建替えを決断できました

附柴事務長

当園は長い間、幼児教育に注力した幼稚園として運営してきました。時代の流れで周辺にはこども園が増えて、当園へも満3歳児の受け入れを要望される声が多くあったのですが、保育室の不足や園舎の老朽化など設備面で余裕がなかったこともあり、いずれはと思いながら模索している状態でした。

自分達ではなかなか重い腰を上げることができないでいたのですが、約5年前、ジャクエツさんに背中を押してもらって、園舎の建替えとこども園化を決断しました。ジャクエツさんとは長年のおつきあいから信頼もあり、不安はなかったですね。ジャクエツブランドは定着していて、園舎設計の実績も多くて、何のためらいもなく、安心して取りかかることができました。

完成した園舎は、希望したことを全部落とし込んでくれて、私達の夢を実現してくれました。住宅密集地にある園舎ですが、市の監査の方が「すごく余裕のある建物ですね」と言ってくれて、とてもうれしかったです。

園長 南田正江氏

Principal

誰にとっても優しい建物になりました

南田園長

設計に当たっては、とにかくあそび場を確保したいとお願いしました。建物が大きくなる分、園庭が狭くなることは必須だったので、できる限りあそびの場が欲しかったんです。それを屋上園庭という提案で叶えてくれました。また、内部にもあそびの場をたくさんつくってくれて園舎内だけでも足りるくらいなので、雨の日も暑い夏も困ることがありません。園内の動線もよく考えてくれました。

乳児・低年齢児の保護者は、靴を脱がずにベビーカーで保育室の前まで来られるので好評です。廊下の幅も広くて、避難車も出しておけるので、何かあった場合はすぐに避難できます。

また、想定外の利点もありました。先日、4歳の園児が転んで足首を骨折してしまって、以前であれば登園できませんでしたが、新園舎ではエレベーターと多目的トイレを設置したことで車椅子での活動が可能となって、休まず登園することができたんです。バリアフリー設備はお年寄りを想定してのものでしたが、園児にとっても大いに活用できました。

職員にとっても、使い勝手のいいプランだと実感しています。見通しが効いて園児の移動もさせやすいですし、職員の休憩室が職員室の上に配置されているのはとても良かったです。広い休憩室で職員室との距離感もいいですし、2階からはその螺旋階段で職員室にさっと下りてこられて便利です。

本当に良いとこずくめです。他の園さんを見学した時に、「園の思いをすべて形にしてもらった」とよく聞きましたが、当園でもわがままをいっぱい言ってもジャクエツさんは嫌な顔することなく全部形にしてくれました。誰にとっても優しい建物になったと思っています。

施工期間が1年ありましたが、ただ工事するだけじゃなくて、子ども達のことも考えてくださって、現場の見学会の時にはジャクエツさん手づくりの紙芝居で建物や工事のことを説明してくれました。保育士さんにスカウトしたいくらい絵も上手で、子どもの事前の興味関心を深めてから現場の見学に入る展開まで素晴らしかったです。それで全員が楽しみに完成を待つことができました。

新園舎でスタートして1年。保育に関しては初めてのこともあり、定着するまでに数年かかるかもしれませんが、それもむしろ楽しみですね。信頼できるジャクエツさんがいるので心強いです。

JAKUETS

設計士 名古屋設計事務所 建築設計課 松本 創

Designer

打合せの度にたくさんの熱い想いやおもしろいご要望をいただき、常にワクワクしながら設計させていただきました。落ち着いた外観でありながらも、先生方の想いや夢がたくさん詰まった園舎になったと思います。

設計士 名古屋設計事務所 建築設計課 村松南帆

Designer

「あそびの場をたくさん設けたい」という先生の想いから、廊下やトイレなどの内装デザインにもあそびの要素を取り入れました。子ども達が各々お気に入りの場を見つけ、楽しい園生活を送ってほしいです。

ディレクター 豊橋店 西井貴之

Director

市内で最も人気の幼稚園のこども園化です。勇気をもって踏み出していただき、一緒に考え話し合い、他にはない素晴らしい園舎にできたこと嬉しく思います。子ども達や保護者の笑顔あふれる様子も感じています。

2025年 5月発行
発行:株式会社ジャクエツ
A2055-0700-15321